毎度のことですが、簡単にコーナーの説明を…。
毎週木曜日は「ステルス団委員(自称)のつぶやき」をお送りしております。私、のりべぇはボーイスカウト団の裏方さんである「団委員」をつとめております。少子化や習い事・生活様式の多様化などにより、ピーク時(1983年)の3分の1とも4分の1とも言える規模にまで縮んでしまったボーイスカウト活動を(勝手に)盛り上げよう!と始めたコーナーですが、「つぶやき」と言うより「ボヤきばっかり」です(涙)。
今回は先週の続きです。
仲間を増やそう!もいいけど、続けてもらえる活動をしませんか?
前回、後半ではスカウト数増加のための行動計画、すなわち「アクションプラン」についてお話をしました。そして最後に、「退団抑止」のお話をしましたが、今回はその続き、具体的な退団抑止についてお話を進めてまいります。
そもそも「退団の原因」、ご存知ですか?
まだボーイスカウト活動に参加され始めた方だとピンとこなかいかもしれませんが、ここで退団の理由を挙げてみましょう。
1.部活動・受験による「学校(学業)理由」
2.ボーイスカウト活動への興味がなくなった「活動内容理由」
3.友達が辞めた「連鎖退団」
4.団(隊)に嫌な人(合わない人)がいる「人間関係理由」
5.お金がない「経済的理由」
この内、5.は仕方ないかと思います。まさか経済的理由で退団を申し出た家族だけ金銭的優遇をするわけには参りません。しかし、1.〜4.はその抑止が不可能ではありません。
退団原因「1」の抑止〜「先輩スカウトの実例を元に対策を立てましょう」
部・クラブ活動、受験が原因のボーイスカウト退団は地域差があります。昭和の頃に管理教育を徹底した地域では今でもその名残があり、中学生は部・クラブ活動への所属が必須とされます。また、主に高校受験ですが、推薦入試が従来より増えている反面、受験理由による退団は毎年発生する原因の一つです。
これらを抑止する方法は「先人たちの知恵」を活用すること、つまり、学校とボーイスカウトの両立に成功している先輩スカウトの意見・実例を参考にするということです。どのように両立し、どのようにそれぞれ成功したかをインタビューし、活動内で発表するなど「盛り込めるように」しましょう。
延べ7年間塾講師のお仕事をさせていただいていた私から申し上げれば、ボーイスカウト活動と受験勉強の両立は基本的には可能です。例外として挙げるのであれば、超難関校の受験と、短期間に20以上の偏差値を上げ、従来の本人では到底合格不可能と言われていた学校に受験する際、くらいなもので、全体から見ればケースは稀です。ちなみに、受験勉強を理由に退団したスカウトの「その後」を追いますと、残念ながら、退団しなければ得られないほどの急激な学力向上は確認できませんでした。
ところが、部・クラブ活動の場合は別でして、本人のやる気・入れ込み方とともに、顧問の教師が熱血漢、あるいは大会で優秀な成績を残す部で、練習からレギュラー争いまで熾烈である、なんて場合ですと、時間も体力も、そして気持ちもそちらに持っていかれます。また、顧問の教師の頭の中にあるのは大会の優勝であり、日々の鍛錬なくして勝ち得ないと考えていることが多いですから、ボーイスカウト活動のために休みます、なんて言おうものなら彼らの逆鱗に触れる、というケースも少なくないようです。本人の自主性を削ぎかねないので、部・クラブ選びの前に「ゆるい系」のものを選ぶよう誘導することは考えものですが、日々のスカウト活動を充実したものにし、部・クラブ活動に視線が向かわないようにするというくらいしか手がなさそうです。
退団原因「2」の抑止〜「カリキュラムのマンネリ化・集会内でのコミュニケーション頻度に注意」
ボーイ隊のみならず、カブ隊でも起こりうる「退団原因」に、ボーイスカウト活動に興味がなくなった、というものがあります。ビーバー隊からスカウト活動に参加していますと、同じようなカリキュラム(集会内容)に遭遇するケースが少なくありません。基本的に「各隊に所属する年数(例:カブ隊なら3年)×12ヶ月」分のカリキュラムがあれば、同じカリキュラムにぶつかるスカウトはいないはずなのですが、全く同じでないにせよ、似たようなカリキュラムに見えてしまう、ということは多々あります。例えば、ビーバー隊の時に行った社会見学がパン工場で、カブ隊の時に行った社会見学が牛乳工場だったら、全く異なる製品加工のはずですが、同じカテゴリー(食品だとか朝食・給食の時によく見かける)に分類されてしまい、飽きられてしまう、ということもあるでしょう。
カリキュラムのマンネリ化は、指導側がうっかり見落としがちな「盲点」です。なにせ毎月の隊集会の内容を前年度末に決め、さらに状況に応じて変更をしなければなりません。下手をすれば、1年で2年分の隊集会カリキュラムを決めねばならないこともあるでしょう。それだけ現場の指導者は大変だったりします(それを楽しんじゃう猛者も中にはいるのですが)。
カリキュラムで困る前に、保護者やスカウトたちとのコミュニケーションの機会を増やしましょう。隊集会終了後、スカウトたちに声をかけ、「楽しかった?」と聞いてみることから始めて見るんです。意外とスカウトたちからは素直な感想が返ってきますし、こちらがマンネリじゃないかと心配しそうなくらい、同じカリキュラムをやってみたいという感想が返ってくることもあるでしょう。こうしたコミュニケーションを続けることで、活動内容理由に起因する退団へ減るかと思います。
退団原因「3」の抑止〜「そもそも『トモダチ作戦』は『諸刃の剣』です」
友達紹介キャンペーンの類は、学習塾でもよく行われることですが、逆にこれを嫌う学習塾もあるくらい、諸刃の剣であると言えます。理由は単純で、どちらかの子が辞めると、もう片方の子も辞めるからです。つまり、1+1=2ではなく、1+1→0という図式になります。増える瞬間は「これだ!」と思うのですが、減る瞬間は「なぜ?」となります。増えるときも減るときもインパクトがありますからね。そういう意味では、兄弟で参加している家庭も同様ですが、そこまで話を追及してしまうと誰もいなくなってしまうので、「トモダチ作戦」にだけフォーカスします。
どうしてもこの作戦を選ぶ際は、入団後、同じ班・組に入れない、バッジシステムを通じ、友達だからといって同じバッジばかり取るようなことなく、それぞれの個性に合わせてバッジ取得のプログラムを組み立てるなど、友達同士何でも同じにしない、個性を大切にし、伸ばすよう、意識させることが大切です。それでも辞める友達に引っ張られがちなのですが…。
もう一つは、それぞれの保護者に対し、「個別に対応」することでしょう。大切なのは友人関係ではなく、自分の子どものはず。ボーイスカウト活動を通じ、我が子にどんな変化があり、どんな結果をもたらしたかということを理解していただきましょう。
退団原因「4」の抑止〜「セーフ・フロム・ハームを実践・強化しましょう」
ボーイスカウト日本連盟は「セーフ・フロム・ハーム」の導入で大きく倫理面で前進したと思います。これはかつてスカウトだった自分から見ても画期的なことであり、自ら過去の振る舞い(別にいじめとかしてませんけどね)に反省しつつ、一層の実践を決意しております。
人間関係の問題から退団してしまうというのは、この「セーフ・フロム・ハーム」が実践できていればかなりのケースで退団を防ぐことが可能だと考えます。リーダーの高圧的態度の防止、スカウト同士のいじめ問題抑止など、かなり広範囲かつ定期的なアップデートと研修強化により、団内でも十分浸透しているかと思います。スカウト同士の突発的な喧嘩といった、子どもならよくあるアクシデントについても、どう解決させ、仲直りさせるかがわかれば、かえって子ども同士で関係の修復はできるものです。とはいえ、そこに不用意に大人が介入すると厄介になることもあります。指導者をはじめ、大人たちがしっかりと「セーフ・フロム・ハーム」を実践しましょう。
蛇足ですが、大人同士でもトラブルが発生することがあります。以前、私はこのコーナーで「厄介者」の話をしましたが、残念ながらごくまれに「発生」します。面倒な「仕切り屋」については厳正なる対処を。また、嘘みたいな話ですが、大人同士の不倫もあるんですよ、実は。保護者とはいえ、所詮は「男と女」ですから。こういうことを書くとふざけるな、とお叱りを頂きそうですが、私個人が誤解を恐れず申し上げるとすれば、ただただ「うまくやってください」としか言いようがありません。それも「バレなければいい」という意味ではありませんので、あしからず。
本当に大切なのは、スカウト数を増やせばいい、ではなく、いかに長く活動に参加してもらえるか。
新たに仲間に加わって下さる方々は「ようこそ!」と全力でお迎えしましょう。ですが、同じくらいか、それ以上に大切なことは、いかに長く活動に参加してもらえるかです。やっぱり、ボーイスカウト活動の「メインディッシュ」はボーイ隊やベンチャー隊です(ビーバー隊やカブ隊を軽視しているわけではありませんのでご注意とご理解の程)。この時期が一番多感であり、物事を一番吸収し、そして協調性と自立心を養うために大切な時期でもあります。かつてその時期にボーイスカウト活動を経験できたことで、自分自身は「少しはまともに」成長できたと思っています。そうした自身の経験、あるいは当時得た感動をぜひ、今の子どもたちにも体感してほしい、そういう願いから、活動のお手伝いをさせていただいている次第です。そして、長く活動に参加してもらえるか、ということは言い換えれば退団抑止。最近になって日本連盟もスカウト数を増やすという一方的な方針から、退団抑止も重視するという、両面的な方針に転換しています。ただ、具体的な方針、特に取り組みやすさであるとか、地域特性を重視する(ローカライズ)という細かい箇所に対してはこれから、という感じがします。私自身、所属しております団で重要な任務を受け持たせていただいております。皆様とこうした情報を共有できればと考えておりますので、ぜひ今後も本コーナーにご注目いただければ幸いです。
次回もお楽しみに!
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